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五日市憲法草案 現代語訳 「第三篇 立法権」(2)

第三篇 立法権

 第三章 国会の職権

  1. (国会は)国家永続のための秩序を確定し、国家の憲法を定め、これを添削・修正し、三大制度(議会制度、行政制度、司法制度か)を存続・廃棄することを司る。
  2. 国会は、国帝および立法権を持つ元老院と民選議院で構成される。
  3. 国会は、すべて公開で行われ、一般の人々の傍聴を許可する。
    ただし、国益のため、あるいは特別な場合に秘密会議の必要があるときは、議員10人以上の求めに応じて、各院の議長は傍聴を禁止することができる。
  4. 国会は、すべての日本国民を代理する者として、法律を起草し制定する立法権を持つ。法律には国帝の認可が必要となる。
  5. 国会は、政府が憲法あるいは宗教、道徳、信教の自由、個人の自由、法の下の平等、財産所有権の原則に違反し、あるいは国の防衛に害を与えるようなことがあれば、これに反対説を主張し、その違反した時点にさかのぼり、その政策の実施や公布を拒絶する権利を持つ。
  6. 民選議院または元老議院が否決した法律案は、同じ会期中に再提出することはできない。
  7. 国会は、公法(国家と国民の関係に関わる法、行政のあり方を規定する法)と私法(私人間の関係についての法)を制定しなければならない。すなわち、国家に必要な建国制度およびその根源(原)となる法、一般の私法および民事訴訟法、海上法、鉱山法、山林法、刑法、治罪法、税の徴収および国家の財政を運営する原則を合議して定め、兵役の義務に関する原則と国家財政の予算書を決定する。
  8. 国会は、税をかけること、鉄道や電気などの利用料として徴収したお金の使用方法を決めること、国家の信用のもとに国債を募ることを認める権限を持つ。
  9. 国会は、行政機関の行うすべて(法律規則に違反していないか、処置が適切であったかどうか)について監督する権限を持つ。
  10. 国会で審議する法案について、国帝はその討議を中止あるいは禁止することはできない。
  11. 国会は、両院(民選議院と元老議院)共に、規則を設けて各院内部の事務を処置することができる。
  12. 国会は、憲法の不完全な部分を議決によって補充する権利、憲法に違反する行為を矯正する権利、新しい法律の制定および憲法変更の発議をする権利を持つ。
  13. 国会は、全国民のために法律の内容を説明しなければならない。
  14. 国会は、国帝、皇太子、摂政官もしくは摂政に憲法および法律を遵守する誓詞を宣べさせる。
  15. 国会は、憲法に定めた時機に摂政を選挙し、その権域を指定し、未成年である国帝を補佐する者を任命する。
  16. 国会は、民選議院より告発され、元老議院の裁判を受けた閣僚や行政官の責罰を実行する。
  17. 国会は、国債を発行し、国土の領地を売却あるいは境界を変更し、府県を新設、分割、合併しそのほかの行政区画を決定する権利を持つ。
  18. 国会は、国家の歳入支出を計算した予算書を検討し、同意したときは予算の実行を認める。
  19. 国会は、国事のために極めて必要な事態に際しては、政府の要請に応じて議員に特別な任務を指定し与える。
  20. 国会は、国帝が没したとき、もしくは帝位が空位となったときは、それまでの施政を検査し、施政上の弊害を改正する。
  21. 国会は、帝国の領土内もしくは港内に外国の軍隊が進入することの判断を下す。
  22. 国会は、毎年、政府からの提案により、平時もしくは臨時の軍隊の兵員数を決める。
  23. 国会は、発行した国債を償還するための適切な方法を合議して決定する。
  24. 国会は、帝国に法律を施行するために必要な行政の規則と組織の設立、およびその不備を補う法律を決定する。
  25. 国会は、政府の官僚・官職およびその給与を設定・改正もしくはこれを廃止する。
  26. 国会は、貨幣の重量や図案、価格や名称、度量衡(長さ、容積、重さ)の単位などを定める。
  27. 国会は、外国との条約を議定する。
  28. 国会は、兵役義務執行の方法およびその規則と期限とに関すること、なかでも毎年召募する兵員の定数および予備軍馬の賦課、兵士の食料や兵営の総則に関することを議定する。
  29. 政府の歳計予算表の規則および租税の賦課の毎年の決議、政府の決算表ならびに会計の管理、実績の検査、新規国債の発行、発行後の公債の変更、国有地の売買、貸与、国家の専売ならびに特権の法律、全国すべてに通じる会計諸般の事務を決定する。
  30. 金銀銅貨、および銀行証券の発行に関する事務の規則と、税関、貿易、電線、鉄道の航運のこと、その他全国の通運の方法を議定する。
  31. 銀行の証券取引、工業の規格、度量衡の基準となる模型の製造、印章の保護に関する法律を決定する。
  32. 医薬品についての法律および伝染病、家畜の流行病からの防護の法律を定める。

第四章 国会の開閉

  1. 国会は、両議院ともに必ず国帝の勅命によって、毎年同時に開会しなければならない。
  2. 国帝は、国家の安寧のために必要な時機においては、両議院の議決を認めず、議会を中止し、紛糾した場合には議院に解散を命じる権利を持つ。
    この場合にあたっては、必ず四十日以内に新たな議員を選挙し、2カ月以内には新議員を召集して議会を再開しなければならない。
  3. 国帝が崩御して、国会の召集期にいたっても召集する者がいない場合は、国会自ら参集して開会することができる。
  4. 国会は、国帝が崩御した際、新たな国帝より解散命令があるまでは、解散せず定期の会議を続けることができる。
  5. 国会の閉会期に国帝が崩御した場合、議員自ら参集して国会を開くことができる。
    もし新たな国帝より解散の命令がなければ、定期の会議を続けることができる。
  6. 議員の選挙が終わったあと、まだ国会が開かれていないときに国帝が崩御し、国会を開く者がいないときは、議員自ら参集して国会を開くことができる。もし新たな国帝より解散の命令がなければ定期の会議を続けることができる。
  7. 国会議員の任期が終了し、次期の議員の選挙がまだ行われていないときに国帝が崩御した場合は、任期満了した議員が1期のみ国会を開くことができる。
  8. 各議院の会議は同時に行わなければならない。もし一院のみが集会して、もう一院が集会していないときは国会の権能を持たない。
    ただし、議員の糾弾裁判のために元老議院を開会する場合は、その法庭(法廷)の資格をもってこの限りではない。
  9. 各議院とも議員の出席が過半数にいたらない場合は、会議を開くことはできない。

第五章 国憲の改正

  1. 国の憲法を改正するときは、特別会議において行わなければならない。
  2. 両議院の議員3分の2の議決を経て、国帝が許可しなければ、特別会を召集することはできない。特別会の議員の召集および選挙の方法は、すべて国会議員と同じとする。
  3. 特別会を召集するときは、民選議院は会議を開くことはできないものとする。
  4. 特別会は、元老院の議員、および国憲改正のために特別に選挙された人民の代民議員で構成される。
  5. 特別に選挙された代民議員3分の2以上、および元老議員3分の2以上の議決を経て、国帝が認可しなければ憲法を改正することはできない。
  6. 召集を要する事務が終了したときは、特別会は自ら解散するものとする。
  7. 特別会を解散するときは、それ以前に召集されていた国会は、その定期の職務に戻らなければならない。
  8. 憲法をのぞくすべての法律は、両議院出席議員の過半数の同意をもって決定する。

【現代語訳 注意事項】

  • この現代語訳は、当館作成の「五日市憲法草案 書き起こし文」を訳したものである。そのため、原文で誤りと思われる文字については加筆訂正し、欠けている箇所には推定した文字を挿入した条文で現代語訳した。
  • 原文には読点・句読点がないため、適宜付与した。
  • 各篇各章の表示は、適宜割愛・追記などの修正を加えた。
  • 「民撰議院」の「撰」の字は、「選」に改めた。
  • この現代語訳は、これまで取り組まれた現代語訳を参考に作成したものであり、専門的な法知識・法解釈に基づくものではない。

【参考文献】

  • 町田市立自由民権資料館 「『五日市憲法(草案)』の現代語訳」
  • 山本泰弘公式サイト「政策屋POLICYA」内「1881現代語訳千葉卓三郎五日市憲法(日本帝国憲法)」(URL http://yamamotoyasuhiro.tsukuba.ch/e306001.html)
  • 諸橋轍次『大漢和辞典』、大修館書店、1989-1990
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