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五日市憲法草案 現代語訳 「第三篇 立法権」(1)

第三篇 立法権

 第一章 民選議院

  1. 民選議院は、選挙法によって定められた規程にしたがい、直接選挙によって選ばれた代民議員によって構成される。
    ただし、人口20万人につき1人の割合で議員を選出しなければならない。
  2. 代民議員の任期は、3年とし、2年ごとにその半数を改選しなければならない。
    ただし、任期に制限なく選出されることができる。
  3. 日本国民であり、神官・僧侶・宣教師・教員以外の者で、政治に参加する権利を持つ30歳以上の男子で、法律に定める額の財産を持ち、所有する土地から収入を得て、選挙法に定める額の税を納めている文武の常識をわきまえた者は、選挙法にしたがって議員に選ばれる資格を持つ。
  4. 前条に掲げる条件を満たす被選挙人のうち、半数は自らの居住する選挙区に限り、ほかの半数は全国どこの選挙区からでも選出されることができる。
    ただし、民選議員と元老議官を兼任することはできない。
  5. 代民議員は(選出された選挙区の代表ではなく)、日本全国の代表者である。よって選挙区民の要請・命令などにしたがう必要はない。
  6. 女性、未成年者、財産権が制限されている者、知的障害や精神疾患がある者、住居がなく、隷属的な立場にある者、政府の助成金を受けている者、懲役1年以上の刑を受けている者、失踪の宣告がされている者は、選挙権を持たない。
  7. 民選議院は、日本帝国の財政(租税・国債)に関する法律案を起草する特別な権利を持つ。
  8. 民選議院は、過去の実施した政策について検査し、その弊害を改正する権限を持つ。
  9. 民選議院は、行政官が提出した議案を討議し、また国帝からの議案を修正する権限を持つ。
  10. 民選議院は、必要な調査のために行政官や民間人を呼び出す権限を持つ。
  11. 民選議院は、政策実施上で法に反する行為をしたと認めた官吏(執政官・参議官)を上院(元老議院)に呼び出し、処分する特別な権利を持つ。
  12. 民選議院は、議員の身分について次の事項を裁定する権利を持つ。
    一 議員で、民選議院の命令・規則または特権に違反する者
    二 議員の選挙についての訴訟
  13. 民選議院は、議院の正副議長を議員の中から選出し、国帝の許可を請はなくてはならない。
  14. 民選議院の議員は、議会で行った討論演説のために裁判に訴えられることはない。
  15. 代民議員は、議会会期中および会期前後20日間は、民事訴訟を受けてもそれに答弁しなくてよい。
    ただし、民選議院が承認した場合は、答弁しなければならない。
  16. 民選議院の代民議員は、現行犯の場合でなければ、下院(民選議院)の承認を受けなければ会期中および前後20日間は逮捕・拘束・審判されることはない。
    ただし、現行犯で逮捕・拘束する場合、あるいは議会閉会後に取り調べや逮捕をする場合でも、すぐに裁判所は民選議院に通知し、民選議院にその事件について真相究明と処分をさせなければならない。
  17. 民選議院は、議会の会期中とその前後20日間は議員の取り調べや身柄の拘束を請求して停止させる権限を持つ。
  18. 民選議院の議長は、議院の事務官(書記等その他)を任命・免職する権限を持つ。
  19. 代民議員は、改選前の最終議会で定めた給与を、その任期中に受けることができる。
    また、特別の議決によって議会出席にかかった旅費を受けることができる。

第二章 元老議院

  1. 元老議院は、国帝の特権によって任命された議官40名で構成される。
    ただし、元老議官は民選議員を兼任することはできない。
  2. 満35歳以上で、次のいずれかの条件を満たす日本人のみが、元老議官になる資格を持つ。
    一 民選議院の議長
    二 民選議員に3回以上選ばれたことがある者
    三 執政官または大臣
    四 参議官
    五 三等官以上に任ぜられた者
    六 日本国の皇族または華族
    七 海陸軍の大将・中将・少将
    八 特命全権大使または公使
    九 大審院・上等裁判所の議長および裁判官、または大検事
    十 地方長官
    十一 勲功があった者または材徳興望ある者
  3. 元老議院の議官は、国帝の特命によって議員の中から任命する。
  4. 元老議院の議官は、終身その職と地位にあるものとする。
  5. 元老議院の議官は、1年に3万円以内の給与を得ることができる。
  6. 国帝の男子および皇太子の男子で、満25歳となり文武の常識を備えた者は元老議院の議官に任命することができる。
  7. 税金を課すための議案は、民選議院で審議、議決される。元老議院は、ただ議決案を重ねて審議して可決するか否決することしかできない。決して議決案を改変してはならない。
  8. 元老議院の制度や編成に関する法律は、まず元老議院で審議されなくてはならない。民選議院は、ただ元老議院で議決された議案を採用するか棄却することしかできない。決して議決案を添削・修正してはならない。
  9. 元老議院は、立法権を用いるほか、次の3件についての権限を持つ。
    一 民選議院から提出された大臣や行政官の行政上の不当の事を審理・裁判することその告発・上告の手続きは法律を別に定める
    二 国帝の身体もしくは権威に対し、また国家の安寧に対する重犯罪を法律の規定にしたがい裁判すること
    三  法律に定めた時機に際して、その規定にしたがい元老議院の議官を裁判すること
  10. 元老議官は、現行犯逮捕されたとき、または元老議院の閉会中のとき以外は元老議院の承認を経ずして逮捕・拘引・裁判されることはない。
  11. いかなる場合であっても、元老議官を裁判もしくは逮捕するときは、直ちに元老議院に通知して元老議院の権限による処分を行う。

【現代語訳 注意事項】

  • この現代語訳は、当館作成の「五日市憲法草案 書き起こし文」を訳したものである。そのため、原文で誤りと思われる文字については加筆訂正し、欠けている箇所には推定した文字を挿入した条文で現代語訳した。
  • 原文には読点・句読点がないため、適宜付与した。
  • 各篇各章の表示は、適宜割愛・追記などの修正を加えた。
  • 「民撰議院」の「撰」の字は、「選」に改めた。
  • この現代語訳は、これまで取り組まれた現代語訳を参考に作成したものであり、専門的な法知識・法解釈に基づくものではない。

【参考文献】

  • 町田市立自由民権資料館 「『五日市憲法(草案)』の現代語訳」
  • 山本泰弘公式サイト「政策屋POLICYA」内「1881現代語訳千葉卓三郎五日市憲法(日本帝国憲法)」(URL http://yamamotoyasuhiro.tsukuba.ch/e306001.html)
  • 諸橋轍次『大漢和辞典』、大修館書店、1989-1990
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