五日市憲法草案 現代語訳 「第一篇 国帝」(1)
第一篇 国帝
第一章 帝位相続
- 日本国の帝位は、神武天皇以来の正統な後継者である現在の国帝の子孫に代々受け継がれる。その相続順序は以下の条文のとおりになる。
- 日本国の帝位は、嫡皇子(皇后との間の長男)およびその男子の血筋の系統に代々受け継がれる。その該当者がいないときは、嫡衆子(嫡皇子以外の皇后との間の男子)およびその男子の血筋の系統に代々受け継がれる。その該当者がいないときは、庶皇子(皇后以外の女性との間の長男)およびその男子の血筋の系統に代々受け継がれる。
- 国帝に男子がいないときは、国帝の兄弟およびその男子の血筋の系統に代々受け継がれる。
- 国帝に男子も兄弟およびその男子の血筋の系統もいないときは、国帝の伯父・叔父(前国帝の兄弟)およびその男子の血筋の系統に受け継がれる。
- 国帝に男子、兄弟、伯父・叔父およびその男子の血筋の系統がいないときは、皇族の中で現在の国帝に最も近い血縁のある男性およびその男子の血筋の系統に国帝の位を継がせる。
- 皇族の中に男性がいないときは、皇族の中で現在の国帝に最も血縁が近い女性に帝位を継がせる。ただしその配偶者は国帝の権限にかかわることはできない。
- この継承の順序はすべて、年長者は年少者に、嫡出子(婚姻関係の相手との間の子)は庶子(婚外子)に、卑属(後の世代)は尊属(先の世代)に優先する。
- 特殊な事情があり、以上の帝位相続の順序を超えて次の相続者を定めることが必要なときは、国帝はその法案を国会に提出し議員3分の2以上の賛成が必要となる。
- 国帝の一族および皇族にかかる費用は、国の予算より相応の額を提供する。
- 皇族の地位は、3代目まで受け継がれる。4代目よりは姓を得て一般人民となる。
第二章 摂政官
- 国帝は、満18歳をもって成年とする。
- 国帝が未成年の期間は、摂政官を置かなければならない。
- 成年の国帝であっても、自ら政務を行うことができない事情があり、国会もその事実を認めた場合は、その事情が存在する間は摂政官を置かなければならない。
- 摂政官は、国帝もしくは太政大臣(政府の最高統括者)が皇族近親者の中から指名し、国会議員3分の2以上の賛成が必要となる。
- 成年の国帝が自ら政務を行うことができない場合で、国帝の相続者が満15歳になっているときは摂政官に任命する。この場合においては国帝もしくは太政大臣より国会に通知するだけで、議決の必要はない。
- 摂政官は、その地位にある間は、名誉や爵位を授けることや軍の儀礼に関することのほかは国帝の権限を代行できる。
- 摂政官は、満21歳以上の成年でなくてはならない。
【現代語訳 注意事項】
- この現代語訳は、当館作成の「五日市憲法草案 書き起こし文」を訳したものである。そのため、原文で誤りと思われる文字については加筆訂正し、欠けている箇所には推定した文字を挿入した条文で現代語訳した。
- 原文には読点・句読点がないため、適宜付与した。
- 各篇各章の表示は、適宜割愛・追記などの修正を加えた。
- 「民撰議院」の「撰」の字は、「選」に改めた。
- この現代語訳は、これまで取り組まれた現代語訳を参考に作成したものであり、専門的な法知識・法解釈に基づくものではない。
参考文献
「『五日市憲法(草案)』の現代語訳」町田市立自由民権資料館
山本泰弘公式サイト「政策屋POLICYA」内「1881現代語訳千葉卓三郎五日市憲法(日本帝国憲法)」(URL http://yamamotoyasuhiro.tsukuba.ch/e306001.html)
諸橋轍次『大漢和辞典』、大修館書店、1989-1990